浄化槽は日常生活で生じた汚泥やし尿を微生物の働きにより分解し、放流するために処理する施設です。下水道と違い、定期的に保守点検や汲み取り清掃を行わなければいけません。
この記事では、浄化槽とは何なのか、下水道との違い、それぞれのメリットやデメリットなどを解説します。新築一戸建てを購入された方で、浄化槽と下水道の違いを知りたい方は是非参考にしてください。
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浄化槽と下水道との違い
浄化槽と下水道の違いは汚水処理の方法が異なります。
- 浄化槽:設置している自宅で汚水処理を行う
- 下水道:市町村が管理している汚水処理場で汚水処理を行う
浄化槽と下水道について以下で詳しく解説します。
浄化槽とは
浄化槽は公共下水道が使用できない地域で汚水を側溝や河川や放流する前に水を浄化するために設置します。

浄化槽は微生物が汚水をキレイにしてくれる!
トイレの水や生活雑排水(キッチン、洗濯、お風呂)は浄化槽の中に流入し、汚水に含まれている有機物を微生物が分解することで浄化された水を側溝や河川へ放流します。
浄化槽は合併浄化槽と単独浄化槽の2種類あります。
下水道とは
下水道はトイレや生活雑排水を道路下に埋没されている下水管を通って処理場まで汚水を流して浄化します。処理場に集まった汚水は綺麗になった状態で川に流します。

下水処理場も浄化槽と同様に微生物がキレイにしてくれる!
下水道は合流式と分流式の2種類です。
浄化槽のメリット
浄化槽のメリットは以下の3つです。
- 下水道使用料が発生しない
- 災害時に強い
- 下水道設置するより安い場合がある
下水道よりも浄化槽は金銭面でメリットを感じられることが多く、事前に確認しておきましょう。
下水道使用料が発生しない
下水道使用料は各家庭で排出した汚水の量に応じて金額が確定しますが、浄化槽を使用している家庭では一切費用は発生しません。
浄化槽は下水道に比べて月々の水道代を抑えられます。
災害時に強い
浄化槽はFRP(強化プラスチック)という頑丈な素材で造られており、災害時でも異常がなければ通常通り使用できます。

浄化槽は基本的に地面に埋めてあるので建物で潰れる心配もありません!
浄化槽本体と配管経路に異常がなければトイレを流す用の水を用意して水洗トイレとして活用できます。
下水道設置するより安い場合がある
下水道設置の費用は配管の引き込み距離で金額が決定します。自宅の全面道路に下水管があるなら短い距離で工事費用も抑えれます。
しかし、自宅の全面道路に下水管が埋没していないと本館から引き込む必要があり距離が長いと費用は高いです。
そのような場合は浄化槽の設置する方が工事費を抑えられるのでおすすめします。
浄化槽のデメリット
- 清掃と点検が義務付けられている
- 浄化槽内部や異常が発生すると工事が必要
- 悪臭が発生する場合がある
清掃と点検が義務付けられている
浄化槽は決められた回数の清掃と点検を行うことが義務付けられているので下水道には無い支払いが発生します。
浄化槽管理者は、環境省令で定めるところにより、毎年一回(環境省令で定める場合にあって、環境省が定める回数)、浄化槽の保守点検及び浄化槽の清掃をしなければならない。
環境省

清掃も点検も地域の専門業者に任せれば安心!
浄化槽に異常が発生すると工事が必要
浄化槽に異常が発生した場合は汚水を綺麗にするための機能が発揮できなくなるので工事が必要です。
浄化槽で多い故障を以下にまとめました。
- ブロア、ポンプ停止
- 仕切り割れ
- 漏水
- 担体流出
- マンホール割れ

臭いや異常を感じたら保守点検会社へ連絡しましょう!
下水道は市町村が管理しているので以上があっても関係ありませんが、浄化槽は使用者が費用を支払うので工事を行うと下水道よりも年間支払額が高くなってしまいます。
悪臭が発生する場合がある
浄化槽の中の微生物が弱まってくると汚水を分解する力が無くなるので悪臭が発生します。
微生物が弱まる現在は以下の通りです。
- 浄化槽の中に必要な量の酸素がない
- 刺激の強い漂白剤などを使用している
- 浄化槽の点検や清掃を行っていない
合併浄化槽は洗濯の水も流入するので微生物が弱まるような洗剤や漂白剤は注意が必要です。
下水道のメリット
下水道のメリットは以下になります。
- 清掃や保守点検が不要
- 悪臭が発生しにくい
- 環境にやさしい
清掃や保守点検が不要
浄化槽は清掃や点検で費用がかかりますが、下水道を使用している場合は一切発生しません。

浄化槽は壊れると修理費用も発生します!
下水道は使用料はかかりますが、公共設備なので異常があった場合は自分で負担する必要がありません。
下水道は浄化槽のように突然の支払いが発生したりすることが無いので安心です。
悪臭が発生しにくい
下水道は下水管を通って処理場まで流れてから汚水処理を行うので異臭が発生しにくいです。
浄化槽は汚水を自宅の敷地内で処理するので悪臭が発生する場合があります。
環境に優しい
単独浄化槽はトイレの水だけを処理するので生活雑排水(キッチンやお風呂の水)は処理されず流れていきます。
下水道は生活雑排水も汚水処理するので単独浄化槽と比較しても環境に優しいです。
下水道のデメリット
下水道のデメリットは以下の通りです。
- 水道費用が高い
- 災害時に弱い
- 浄化槽の設置より高い場合がある
水道費用が高い
下水道は水を使えば使うほど水道代が高くなります。
家族が増えたりプールや洗車で水を多く使ったりすると浄化槽の維持費を超えてしまう可能性もあります。
災害時に弱い
下水道は大地震が発生すると自宅の下水管だけでなく、街の下水管も破壊することがあり使用出来なくなります。

能登半島地震では下水道被害が実際に発生しました。
能登半島地震では水道管が広範囲に壊れ、石川県を中心に最大約13・7万戸で断水が発生した。道路が寸断された影響などで復旧が遅れ、3月8日現在、石川県の輪島市、珠洲市、七尾市、能登町、内灘町の5市町計約1・7万戸でなお断水が続いている。
朝日新聞
破壊された下水管は流れなくなったり道路に汚水が溢れたりするのでトイレの使用制限をかける場合もあります。
浄化槽は本体が壊れない限り使用できますが、下水道は地震などの災害時に弱いのが心配です。
浄化槽の設置よりも費用が高い場合がある
自宅を下水道へ繋げる工事は配管から下水管までの距離で費用は変わります。
自宅のすぐ目の前に下水管が通っていて、最終汚水マスも近ければ接続工事費用は30〜50万ほどです。
最終マスから下水管までの距離が遠い場合は費用が高くなり、浄化槽の設置費用費用よりも高くなる可能性はあります。
まとめ
浄化槽と下水道はどちらも生活排水の処理をする設備ですが、それぞれ処理方法や仕組みが異なります。下水道が未設備の地域では、浄化槽を設置し定期的に保守点検と清掃が必要です。
また、浄化槽と下水道とではそれぞれメリットやデメリットがあります。汚水処理能力が高いのは下水道ですが、初期費用のランニングコストを考えると浄化槽は費用的にメリットがあります。
個々の状況や地域によって適切な選択をしましょう。